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非上場株価の調べ方・非上場株式の評価方法と計算方法を解説

上場企業の場合には株式市場における取引の相場価格で株価が決定しますが、非上場企業の場合にはどのような要因で株価を決めるのでしょうか。本稿では、非上場企業の株価の調べ方や評価方法、そして計算方法に関して詳しく説明します。


非上場株式とは

非上場株式とは、上場株式市場のような取引相場が存在していない株式、つまり実際に上場株式相場や気配相場などがある株式を除外した株式です。他にも、未公開株と呼ばれることもあります。相続や贈与の結果として非上場株式を得た株主は、大きく分けてその非上場株式を発行している企業の経営権・支配力を保持している同族株主など、あるいはそのような同族株主などを排除した株主などの2種類に分けられます。

上記の2種類の株主に対してはわが国の税法上、原則的評価方式または、特例的評価方式配当還元方式を適用することで非上場株式を評価します。日本の株式会社の中で株式を公開している企業の割合は、全体の1%未満にしか過ぎません。大部分の株式会社の株式は、非上場なので取引相場というものがありません。したがって、客観的に評価をすることが難しいという特徴があるのです。

企業の経営者にとっては、株価の動向から非上場である取引先の経営状況がどうなっているのかを判断することや、取引先から贈与された非上場の株式にはどのくらいの価値があるのかなどを把握することは困難です。また、経理部門の担当者が、贈与・相続をされた非上場株式を会計上処理するための評価に悩むといったケースも少なくはありません。


非上場会社の株価の基本的な考え方

取引相場が存在している上場株式は、「取引所の株価」という客観的な価格を用いて株価を把握することができます。しかし、中小企業のように公開していない(未上場の)企業の株価を評価する場合には、客観的な値が存在していません。こうした非上場(上場していない)の株式を評価する場面では、「財産評価基本通達」(国税庁が作成)に記載されている「取引相場のない株式等の評価」のルールに沿って評価します。「財産評価基本通達」においては、株式市場における相場価格(時価)が存在しない非上場株式は、企業の規模によって、大会社、中会社、小会社の3種類に分けられており、その区分に対応した評価方式が利用されています。

相続や贈与によって非上場株式を取得した株主が同族株主なのか、それとも同族株主以外の株主なのかで評価方法が変わります。同族株主かそうでないのかによって会社の経営に対する支配力(影響度)が異なるので、支配力の大小によって当該株式の保有目的も変わるものとされるからです。

支配権を有している同族株主が取得する非上場株式を評価する方法には、企業の業績や保有している資産の中身などを映し出した類似業種比準方式純資産価額方式(これらを原則的評価方式と呼びます)を活用し、同族株主を除外した株主が取得する非上場株式の評価方式配当還元方式(これを特例的評価方式と呼びます)を活用し、それぞれ算定します。


非上場株式における株価の評価方法


1 類似業種比準価額方式

類似業種比準価額方式とは、業界別に上場している標準的な企業と比べて非上場株式の株価を算定する方法です。類似業種比準価額方式による株価算定は、類似している業種に属している上場企業の株価をベースにして、一株あたりの株価を求めるものです。

また、類似業種比準価額方式による株価算定においては、企業規模による差異を修正する必要があります。一般的には、上場企業は規模が大きいですが、非上場企業は大規模な企業から中規模・小規模の企業まで様々な規模の企業があります。非上場企業の株価で上場企業の株価によく似ているのは、規模が大きな企業です。したがって、規模の大小に応じて、大会社は0.7、中会社は0.6、小会社は0.5という比率(斟酌率)を計算式において掛けます。

類似業種比準価額方式を適用して計算された株価は、市場の影響は受けるものの自社株式の時価変動の影響を受けることはないという特徴があります。また、自社の利益額や配当金額額を計算式の途中で計算しますが、類似業種の株価をかけて算出するため最終的には市場そのものが成長している場合には株価が高く算定されることが特徴です。

類似業種比準価額方式における計算式は、「1株あたり評価額 = 類似業種株価 × [(非上場株式の発行企業の配当金額/類似企業の配当金額) + (非上場株式の発行企業の利益金額/類似企業の利益金額) + (非上場株式の発行企業の純資産額/類似企業の純資産額)] /3 × 斟酌率」となります。


2 純資産価額方式

純資産価額方式とは、会社の資産価値から純粋に株価を求める方式で、類似業種比準価額方式とは、貸借対照表の純資産から企業価値を算出して非上場企業株式の1株あたり株価を求める点が異なります。純資産方式を用いた株価算定は、「純資産の算定」と「1株あたりの純資産の算定」と分けられます。

純資産価額の算定では資産と負債の差額から純資産を求めるのですが、具体的には課税のタイミングにおけるそれぞれの資産の合計金額から、それぞれの負債の合計金額と法人税相当金額を差し引いた金額を計算します。そして、この金額を発行済株式数で割ることよって、1株あたりの純資産額を求めることができます。

純資産価額方式では、自社の財務諸表をベースにして株価を計算するので市場の影響を受けることがありません。ただし、自社の資産や負債の影響は加味されます。したがって、時価評価が可能な資産を多数保有している状況下で時価が上昇すれば株価も上昇することになります。そうすると株価を操作しやすくなるため、結果として高めの株価が計算されるケースがあり得ます。なお、流動資産と流動負債の時価評価はしません。受け取る金額や支払い金額が確定していることが理由です。

純資産価額方式の計算式は、「1株あたり評価額 = (資産の相続税評価額 - それぞれの負債の合計額 - 評価差額に対する法人税等相当額37%) / 課税タイミングにおける発行済株式数(除く、自己株式数)」となっています。


3 配当還元方式

配当還元方式とは、株主の視点から株価を計算する方法です。1年間の配当金額(過去2年間の平均)を一定の割合(10%)で割り戻して株価を算定します。配当還元方式は、支配権を保有している割合が少ない企業の場合には経営参加することが不可能なので、もはや配当に期待するしかありませんが、配当還元方式はこうしたケースで用いられます。配当還元方式においては配当還元価額を求めて株価を算定します。

しかし、実際に利用されるケースは少ないと考えられます。なぜならば、相続では支配比率が高い企業を相続することが一般的であり、支配比率が低い企業を相続をすることはあまり考えられないからです。配当還元方式の計算式は「1株あたり評価額 = 1株(50円)あたりの年間の配当金額 / 10% × 1株あたりの資本金などの金額 / 50円」となっています。

(参照:https://chester-tax.com/contents/unlisted/unlisted1-2.html)


STEP1 会社の規模を調べる

前述したように、非上場株式を評価する方法には、類似業種比準価額方式、純資産価額方式、配当還元方式があります。どの評価方式を採用するかは企業規模によって区分されていますので、その区分ごとに判定します。企業規模による分類は、大会社、中会社、そして小会社なのですが、中会社についてはさらに細かく、中会社(大)、中会社(中)、中会社(小)に分類されます。


①純資産価額(帳簿価額)を調べる

会社は、業種別・純資産額(帳簿価額)に分類されています。


大会社

卸売業      :純資産額(帳簿価額)が20億円以上

小売・サービス業 :純資産額(帳簿価額)が15億円以上

その他の事業   :純資産額(帳簿価額)が15億円以上


中会社(大)

卸売業      :純資産額(帳簿価額)が4億円以上

小売・サービス業 :純資産額(帳簿価額)が5億円以上

その他の事業   :純資産額(帳簿価額)が5億円以上


中会社(中)

卸売業        :純資産額(帳簿価額)が2億円以上

小売・サービス業 :純資産額(帳簿価額)が2.5億円以上

その他の事業   :純資産額(帳簿価額)が2.5億円以上


中会社(小)

卸売業      :純資産額(帳簿価額)が7千万円以上

小売・サービス業 :純資産額(帳簿価額)が4千万円以上

その他の事業   :純資産額(帳簿価額)が5千万円以上


小会社

卸売業      :純資産額(帳簿価額)が7千万円未満

小売・サービス業 :純資産額(帳簿価額)が4千万円未満

その他の事業    :純資産額(帳簿価額)が5千万円未満


②従業員数をチェックする

上記の純資産額(帳簿価額)に加えて、従業員数でも会社は下記のように区分されています。従業員による区分は業種別ではなく全業種で共通です。


大会社

従業員数70人以上(純資産額((帳簿価額)の大小にかかわらず)、または従業員数が35人超で純資産価額(帳簿価額)が大会社の条件を満たしている場合


中会社(大)

従業員数が35人超で純資産価額(帳簿価額)が中会社(大)の条件を満たしている場合


中会社(中)

従業員数が20人超で純資産価額(帳簿価額)が中会社(中)の条件を満たしている場合


中会社(小)

従業員数が5人超で純資産価額(帳簿価額)が中会社(小)の条件を満たしている場合


小会社

従業員数が5人以下で純資産価額(帳簿価額)が中会社(小)の条件を満たしている場合


③年間の取引金額をチェックする

純資産額(帳簿価額)や従業員数だけではなく、業種別の年間取引金額でも分類されています。


大会社

純資産額(帳簿価額)と従業員数が大会社の条件を満たす企業で、年間取引金額が、

卸売業      :年間取引金額が30億円以上

小売・サービス業 :年間取引金額が20億円以上

その他の事業    :年間取引金額が15億円以上


中会社(大)

純資産額(帳簿価額)と従業員数が中会社(大)の条件を満たす企業で、年間取引金額が、

卸売業        :年間取引金額が7億円以上

小売・サービス業 :年間取引金額が5億円以上

その他の事業   :年間取引金額が4億円以上


中会社(中)

純資産額(帳簿価額)と従業員数が中会社(中)の条件を満たす企業で、年間取引金額が、

卸売業      :年間取引金額が3億円以上

小売・サービス業 :年間取引金額が2.5億円以上

その他の事業   :年間取引金額が2億円以上


中会社(小)

純資産額(帳簿価額)と従業員数が中会社(小)の条件を満たす企業で、年間取引金額が、

卸売業      :年間取引金額が2億円以上

小売・サービス業 :年間取引金額が6千万円以上

その他の事業   :年間取引金額が8千万以上


小会社

純資産額(帳簿価額)と従業員数が小会社の条件を満たす企業で、年間取引金額が、

卸売業      :年間取引金額が2億円未満

小売・サービス業 :年間取引金額が6千万円未満

その他の事業    :年間取引金額が8千万未満


STEP2 会社の規模に合わせた評価方式を選択する

前述した会社の規模によって、非上場株式の評価方式にも違いがあります。会社の規模による区分判定をするのは、上場企業とほぼ同程度の規模を持つ会社は上場企業の株価をベースにした類似業種比准価額方式で評価するからです。一方で、規模が小さな会社は事業用の資産評価をベースとする純資産価額方式で非上場株式を評価することが実態に則しているとされるからです。

ゆえに、会社のサイズ(大会社・中会社(大)・中会社(中)・中会社(小)・小会社の5種類)による判定に基づいて、非上場株式を評価します。大会社は類似業種比準価額方式を用いて評価しますが、純資産価額方式を施用することも可能です。中会社は類似業種比準価額方式と純資産価額方式を併用して評価します。小会社の非上場株式の評価は、純資産価価額方式を用いて評価します。ただし、中会社における併用方式の結果に斟酌率である0.5を乗じることも、納税義務者の選択次第では可能です。


STEP3 評価方式にあてはめて計算をする


1 類似業種比準価額方式

大会社の非上場株式の評価方法である類似業種比準価額方式は、事業内容が類似している上場企業の株式の株価と比準することで株価を評価する方法です。具体的には、①評価対象会社の事業の類似業種である上場企業の株価、②1株あたりの配当金額、③利益金額、④純資産価額(帳簿価額)に基づいて以下の算式で計算されます。

「① ×(②/類似業種の1株あたりの配当金額 + ③/類似業種の利益金額 + ④/類似業種の純資産額(帳簿価額)) /3) × 斟酌率(大会社は0.7、中会社は0.5、小会社は0.5) × (1株あたりの資本金などの額/50円)」


2 純資産価額方式

中会社および小会社における非上場株式の評価に適合している純資産価額方式は、会社の財産に対する保有分を株式と考えることで、会社の純資産額をベースに非上場株式の評価額を計算する方法です。

最初に、課税のタイミングにおける会社が保有している資産と負債を相続税評価額として評価して、資産額から負債額を引いて「相続税評価額」として評価した純資産額①を求めます。次いで、帳簿価額(税務上の)の資産額から負債額を引いて簿価上としての純資産額②を算出します。そして①-②が③含み益なので、③含み益の37%を法人税額に相当すると考えて、①から③を引いた純資産額を発行済株式数で割った数値を評価額とします。

具体的な計算式は、「1株あたり評価額 = (資産の相続税評価額 - それぞれの負債の合計額 - 評価差額に対する法人税等相当額37%) / 課税タイミングにおける発行済株式数(除く、自己株式数)」です。


なお、類似業種比準価額方式と純資産価額方式とをミックスさせた方法とは以下の通りです。この方法は中会社および小会社で利用可能です。

中会社(大) :類似業種比準価額 × 0.9 + 純資産価額 × 0.1

中会社(中) :類似業種比準価額 × 0.75 + 純資産価額 × 0.25

中会社(小) :類似業種比準価額 × 0.6 + 純資産価額 × 0.4

小会社    :類似業種比準価額×0.5+純資産価額×0.5

の数値と純資産価額方式の数値のどちらか少ない方の金額による評価方式を選定することが可能な方法です。


3 配当還元方式

同族株主などを除く株主などは当該企業に対する支配力を保有していないので、非上場株式を所有する目的は株主配当に対する期待と考えられます。そのため、非上場株式の評価方法の簡便性の観点から配当額をベースとした配当還元方式が採用されることが多いでしょう。


4 例外的な評価方法を使う場合も

例外的評価方式である配当還元方式は、以下に挙げたような非上場株式を評価する事例において適用可能です。

① 同族株主が存在している企業の同族株主以外の株主が取得した株式

② 同族株主が存在している企業の同族株主集団には含まれているものの、会社の支配力が強くない(保有株式数が少ない)一定の少数株主(除く、一定の役員)として取得した株式

③ 同族株主が存在していない企業の株主に15%以上の議決権を保有している株主集団が存在しているケースで、その株主集団には属しない株主として取得した株式

④ 同族株主が存在していない企業において、議決権を保有している比率が15%以上となる株主集団が存在していて、加えてそうした15%以上の集団に中心的な株主はいるが、判定する本人は中心的な株主ではなく一定の役員でもないときに株主として取得した株式

(参照:https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4638.htm)


非上場株価・株式の評価方法まとめ

非上場株価の評価方法はどれを使えばいいのかを判断する際に、会社の判定を正しく行う必要があります。会社の状況や目的に応じて活用する計算式が変化します。

単純に株式の価値を知りたくて計算するのであれば、利益を重視したい場合は類似業種比準方式が適していますし、資産の価値を重視したい場合は純資産方式が適しています。配当割合を重視したい場合は配当還元方式が適しています。

より具体的にお話を聞きたい場合は、ぜひ金融業界のプロフェッショナルも在籍するJPMergersにご連絡ください。

https://jpmergers.jp/

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