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資金調達

【徹底解説】株式による資金調達の課題とたった二つの解決方法とは・・・?

実際にベンチャー企業が株式による資金調達を検討する際に、参考になる事例の紹介や抑えておくべきポイントを本記事では解説していきます。

バリュエーションについて

バリュエーションの具体的な手法等については、別の記事で詳述しますが、本記事ではベンチャー企業がVC等から資金調達する際のプロセスや、事業計画との関係について、概観しています。

ベンチャー企業の資金調達においては、会社の規模や成長段階に応じた投資ラウンドという指標が利用されることが多いです。

投資ラウンドの各段階は以下の通りです。

i. シード

事業開始前の段階で、多額の資金が必要な場面は少なく、調達金額は数百万円程度。

ii. アーリー

起業直後の段階で、事業が軌道に乗る以前で赤字の場合も多い。運転資金をはじめ、先行投資として出費がかさむ時期で、1千万円程度の資金調達が必要となる場合もある。

iii. シリーズA

事業が本格的に稼働し、顧客増が見られる段階で、売上拡大のための人件費やマーケティング費用、設備投資が必要となる時期となる。資金調達の規模は、数千万円程度となる場合が多い。

iv. シリーズB

事業が軌道に乗り、継続的な成長が見込める段階で、より充実した設備や優秀な人材の確保が求められることから、調達金額の規模は数億円程度となることが一般的。

v. シリーズC

企業として安定期に入り、IPOやM&Aといったエグジットを意識する段階。

さらなる事業拡大や買収等のため多額の資金が必要となることもあり、その際の調達金額の規模は十億円以上となる場合が多い。

VCからベンチャー企業への投資は、アーリーないしシリーズBを中心にいずれの投資ラウンドでも行われており、ベンチャー企業の資金調達において、VCの存在感は非常に大きいといえる。

企業がVCから資金調達を行う際には、通常、必要な金額に応じて目標となる調達額を設定する。

VCは一般的に、第三者割当増資により発行された新株を引受けることにより、資金を交付するが、新株の単価は増資時点の発行会社の時価総額を基に、発行会社と引受先が合意した水準で決定される。

VCが、発行会社が算定した時価総額及び株式の単価の妥当性を検証し、投資の可否を判断する際に重要となるのが、事業計画における数値計画、特に収益の指標やキャッシュフローの水準である。

発行会社が目標とする資金を調達する際には、当該時点においてどの程度の収益水準を想定する必要があるかを想定して、事業計画を策定する必要があると言えます。

資金調達でよくある課題と解決方法

よくある課題①: 各投資ラウンドに対応した資金調達方法等の変動

先行投資等により資金需要が発生する一方、取引実績に乏しいベンチャー企業にとって、どのように資金を確保するかということは、極めて重要な経営課題と言えます。

これまで見てきたように、資金調達の手段は多岐にわたるが、アプローチすべき資金調達先や利用すべき資金調達方法の選択を的確に行うことが、スムーズな資金確保には不可欠です。

資金調達方法等の不適切な選択により、必要な水準の資金の確保に失敗したり、資金は確保できたとしても必要以上のコストを負担したりすることを避けるべく、自社の成長段階を正しく認識することが重要となります。

よくある課題②:事業計画の精度、アップデート

事業計画の策定にあたって、提出先に好印象を与えるべく、過度な脚色や楽観的な見通しに基づいて作成しまうようなケースが見られるが、望ましいものとは言えません。

仮にこのような計画を基に、資金調達に成功したとしても、来期の決算書を提出した段階で、計画と大きな乖離が生じた場合、自社に対する信用が低下し、それ以降の資金調達に支障をきたす懸念があります。

また、事業計画は策定から3年ないし5年間程度の数値計画を策定することが一般的であるが、いったん策定したら終わりではなく、事業環境の変化等に応じて随時更新していくことが必要です。

解決方法は、以下の通りです。

解決方法①:現状の投資ラウンドの認識と効率的な資金調達方法の追求

投資ラウンドについて、損益や事業期間が一定の数値に達したから次の段階に進むといった客観的な基準がある訳ではなく、あくまでVCをはじめとする投資家にとっての企業の成長段階の目安として利用されることが多い点に留意が必要です。

現状が、投資ラウンドのどの段階に位置するのかは、自社と外部の認識にずれが生じる場合もあるため、可能であれば複数の投資家や専門家等との対話を通じて、外部からの評価を参考としながら、確認することが望ましいです。

それぞれの投資ラウンドで、アプローチすることが想定される資金調達先は以下の通り。

適当な時期に、適切な資金調達先にアプローチしていくことで、必要な資金の確保や信用度が向上しやすくなるとともに、効率的に資金調達を進めていくことが可能となります。

解決方法②:投資ラウンドに応じた計画策定

事業計画は、少なくとも年1回の頻度で更新し、借入先や投資家に対して前期の実績とともに報告することが望ましいです。

ただし、事業環境や自社の事業規模が著しく変動しているような場合は、前述のタイミングに拘泥することなく、随時更新していくことで、外部への説明が容易となり、理解が得られやすくなります。

また、数値計画について、シードやアーリー、シリーズAの段階では、損益計算書(PL)計画のみが策定されることが多いです。

一方、貸借対照表(BS)やキャッシュフロー(CF)計画まで策定するケースはさほど多くない傾向にある。例えばIT関連事業等のBS項目の重要性が大きくない業種であれば、シリーズB以降においても策定しないこともありえます。しかしながら、製造業や多額の運転資本が必要となる事業の場合、BS及びCF計画を策定することで、PL計画のみでは抽出できない課題が発見されることもあるため、できる限り早期の段階で策定することが望ましいと言えます。

バリュエーションの観点からも、PL計画のみの場合は、原則としてマルチプル法のみでの評価とならざるを得ないが、BS・CF計画を策定することで、DCF法をはじめとする様々な評価手法を用いて、より多面的な評価が可能となることから、VC等の投資家にとって投資判断がしやすくなるメリットがあります。

実際の資金調達の実例解説

(1) ベンチャー企業の資金調達事例

【案件概要】

対象会社:創業2期目のアプリ開発会社

業況:4四半期連続増収、営業赤字

資金調達計画:VCからの出資及び銀行借入

経緯:創業者は米国シリコンバレーで起業家としての実績を有し、自身が筆頭株主として出資するとともに、過去の顧客等からも出資を受けて当社を創業。

当社の事業を日本国内で本格的に展開するに当たって、国内のVCや事業会社から出資を受けて、信用力の向上を図るとともに、金融機関からの借入を行い、取引基盤の強化を企図。

事業計画や当社のアプリ開発における独創性や技術力アピールしたプレゼン資料を作成し、複数の投資家にアプローチしたところ、当社の将来性に対して高い評価を得られ、総額約75億円の調達に成功。

一方で、銀行借入については、日本政策金融公庫やメガバンクを含む、複数の金融機関に打診したものの、借入実現に至らず。

損益計画において、営業黒字化のタイミングを来々期(4期目)以降と想定したところ、金融機関から当面の赤字が見込まれる先に対しては、当社が想定するような金額(1億円以上)の融資は困難との反応があったもので、黒字化が現実的に見込まれるタイミングで改めてアプローチしていくこととなった。

(2) 上場企業の資金調達事例

① ㈱HISによる第三者割当増資及び新株予約権発行

概要:2020/10/2付の適時開示で、第三者割当増資及び新株予約権発行による総額22.6億 円の資金調達を実施することを発表。

募集内容は以下の通り。

増資及び新株予約権割当先のLMA及びMAP246は香港の投資会社ロングコリドーアセットマネジメントが運営するファンドで、新株予約権割当先の澤田秀雄氏は同社の代表取締役会長兼社長。

新型コロナウイルスの影響で業績が悪化する中で、エクイティファイナンスを実施することで資本増強を行い、財務体質の改善を図ることが目的。

新株式の単価1,525円は、同社の過去3か月間の株価終値の平均値1,693.9円の90%相当額として決定されている。

また、新株予約権の発行価額1,419円は、価値評価を第三者評価機関(㈱赤坂国際会計)に依頼して算定された価格を基に決定しており、新株予約権の行使価額1,665.9円は、2020/9/30の終値1,851円の10%ディスカウント相当額として決定されている。

② ㈱オルトプラスによる新株予約権(行使価額修正条項付)発行

概要:モバイル端末向けソーシャルゲームの開発及び運営を行う同社は、2017/2/23付の適時開示で、新株予約権発行による資金調達を実施することを発表。

募集内容は以下の通り。

当該新株予約権の特色は、行使価額修正条項が付与されており、行使時点の株価の状況に応じて行使価額が変動するスキームとなっていることである。

具体的には、行使価額は、行使日の前取引日の終値の90%相当額に都度修正される定めとなっており、行使された時点の株価次第で、調達資金額が変動する仕組みである。

ただし、行使価額には下限が設定されており(上限は設定なし)、株価が下限行使価額を下回って推移した場合、権利行使が行われず、資金調達が当初想定額を大きく下回る可能性がある点がデメリットとなっている。

発行会社にとっては、前述のリスクはあるものの、業績の改善等により、株価が当初行使価額を上回る水準で推移した場合、当初見込んだ水準を上回る資金調達が可能となる点や、潜在株式数を限定しており当初の想定を上回る希薄化が生じるおそれがない点がメリットといえる。

実際に、当該新株予約権の行使期間中に、株価は当初行使価額を上回る水準に達し、最終的な調達額は約21.8億円と、発行時点の想定を超える結果となった。

資金調達先の探し方について

(1) エンジェル投資家

エンジェル投資家とは、創業間もない企業に対し資金を供給する個人投資家のことで、投資の対価として株式や転換社債を受け取ることが一般的です。

自らが所有する資金を投資する点において、他社が出資した資金を投資するVCと異なっています。

実際に、我々Decillion Capitalもエンジェル投資家から資金調達をしております(参考記事

エンジェル投資家は、創業時の主な資金の出し手である創業者の親族・友人とVCの間に存在する資金供給のギャップを埋める存在となっています。前者から1,000万円以上の資金を調達することは一般的に困難な一方、VCは投資効率の観点から1億円未満の小口投資に積極的でない場合もあります。

大部分のエンジェル投資家は、自身も起業家として経験を有しており、単なる資金供給にとどまらず、経営面でのアドバイスや有力者の紹介等を通じて、投資先をサポートする場合もあります。

(2) 資金調達先の探し方(企業の成長ステージにより事業会社、VC、金融機関、公募と異なる)

前述の通り、自社の成長段階に応じて、適切な資金調達先へアプローチすることが、円滑な資金調達の実現に重要なポイントとなります。

多様なアプローチ方法があるが、例えば、エンジェル投資家であれば、ベンチャー企業とのマッチングサービスが増加しており、アクセスの促進が行われています。

銀行借入の場合、取引実績が乏しい段階ではプロパー借入を行うことは容易ではないため、制度融資を利用して金融機関との取引実績を構築したり、日本政策金融公庫の創業融資制度で弁済実績を積み上げたりすることが重要となります。

VCについては、エンジェル投資家からの紹介やVCが主催する起業家向けのイベントに参加してアプローチするほか、取引金融機関からグループのVCを紹介される場合もあります。また、VCと良好な関係を構築できれば、新たなVCの紹介を受けられる可能性もあります。

最近では、様々なM&Aマッチングプラットフォームも台頭してきており、そういったプラットフォームを通じて資金を調達する手法もあります。

最後に、補助金・助成金については、種類や内容が多岐にわたっており、紹介サイトや国や自治体が設置した相談窓口を活用して、自社に適切なものを選択することが最初のプロセスとなります。申請や利用に際して、書類の作成や報告等の事務も相応に発生することから、社内体制が十分でないベンチャー企業にとって負担となる場合もあり、必要に応じて補助金・助成金に強みを持つコンサルタントの活用を検討することも検討に値するかと思います。

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