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M&Aハウツー

【全公開】M&Aのプロが解説するM&A仲介業者の選び方とは・・・?

本記事では、M&A仲介業者の選び方について、Decillion Capitalのプロフェッショナル監修のもと解説していきます。

M&A仲介業者のレベル差

近年の事業継承ニーズの高まりを受けて、中小企業M&Aは急激に身近になり、そのため、M&Aは成長産業となった。特に仲介は、利益率がよく将来有望なビジネスとして大いに注目されている。

それに伴い、M&A仲介業者が爆発的に増加しており、これまでM&Aに関係のなかった異業種(人材紹介やITなど)の参入や、M&Aそのものを理解していないセールスマンが大手M&A仲介会社に転職するなど、支援経験や知見に乏しい人間が相当数入り込み、業界全体の低レベル化が深刻になってきている。

中小企業M&Aの売り手の大多数は、M&Aも初めてのため勝手がわからず、その経験不足を助けるために用いるためにM&A業者を利用するが、実態は、そのレベル差はまちまちである。そのため、誠実で優秀なM&Aアドバイザーを選ぶ必要がある。

M&A仲介業者の選び方

①M&A仲介業者の比較
M&A仲介業者は2~3社を比較して選ぶのが望ましい。初めてのM&Aにおいては、比較もせず、仲介業者の良し悪しを見抜くのは困難だが、7社も8社もコンタクトした場合は、逆に悪質な業者に接触し情報流出のリスクも高まるため、ある程度仲介業者を下調べした上で接触するのは2~3社に留める。この際に、銀行や顧問税理士に相談しても良いが、彼らはバックマージンを受け取っているため、あくまで候補を教えてもらうというスタンスに留める必要がある。紹介されて断りづらい関係であれば、最初から相談しないことが賢明である。

また、仲介業者の下調べの方法としては、仲介が発信している情報(書籍やWeb記事)の確認や、求人サイトの求人票(どんな人材を採用しているか)やクチコミの確認をするという方法がある。

②M&A仲介業者の言動確認
2~3社に絞り込んだ後、自身の目でどの業者が最適かを見極る必要がある。基本的には担当者との相性なども決定要因となるが、以下の言動を受けた場合、不誠実な悪質業者の疑いが濃厚なため、契約をしないほうが良いとの判断になる。

・何の話も聞かずに、仲介契約書に押印を求める
・よくわからない資格や経験を過剰に宣伝される
・入札形式で進めず、複数の買い手を見つける行動をしない
・価格交渉や契約書チェックといった中立ではないサービスの提案をされる
・自身の主張ばかりで、交渉の緩衝材としての役割を果たせそうにない

③M&A仲介業者の手数料比較
M&A仲介の手数料は業者ごとに異なっており、レーマン方式(後述)という計算方法を用いた場合でも、細かい運用には大きな差があるため、計算結果が全く異なる場合がある。また、後述となるが、着手金や月額報酬、中間報酬等の初期費用及びランニング費用の有無も業者ごとに異なる。仲介業者の手数料計算は複雑なため、自社に当てはめた場合の金額を業者に直接確認することが確実である。それぞれの仲介業者に同じ前提条件で質問を行い、比較することが好ましい。なお、着手金や月額報酬、中間報酬等の初期費用及びランニング費用の有無も確認するため、以下の3つのパターンで報酬額を明示させると良い。

・契約後4カ月で基本合意し、その後3カ月で、〇億円でM&Aが成立(売れたケース)した場合
・契約後4カ月で〇億円を目安に基本合意したが、3カ月後に破談(直前で破談したケース)した場合
・買い手探しを6カ月間してもらったが、基本合意に至らなかった(相手が見つからないケース)場合

④アドバイザリー契約書の内容確認
仲介業者とのアドバイザリー契約書の内容は、厳重に確認を行う必要がある。中には悪質な条項で初心者である依頼者を罠に嵌める業者も存在する。特に「専任期間」は注意が必要となる。

専任期間とは、売り手が「その期間中は他の仲介業者やFAを利用しない」 という趣旨の条項となり、仲介業者にとっては顧客の囲い込み期間となる。この専任期間は、M&A成立の直前で別業者への乗り換えを防ぎたいという仲介業者の事情を反映したものであり、設定すること自体は正当なものだが、1年を超えるような場合は明らかに長いため、そのような仲介業者とは契約しないことが望ましい。

悪質な業者を見抜くための警戒と知識

業者自身が経験不足な場合もあるため、まずは、自身がM&Aの初心者の場合、警戒感を緩めないようにする必要がある。

また、M&Aに関する知識を付け、自身の手で業者をコントロールする必要もある。M&Aの本質的な部分を理解すれば、悪質・低レベルな業者に気付くことができ、騙される可能性も低下する。

サービス及び報酬体系

①仲介業者・FAの手数料
仲介業者・FAを利用するに当たり、料金体系として、着手金・月額報酬・中間金・成功報酬の形式が多く見られることから、これらの概要について説明する。ただし、仲介業者・FAの手数料には一般的な法規制がなく、どのような料金体系を採用するかは、あくまで各仲介業者・FAによる点については注意が必要である(着手金・月額報酬・中間金を設けず、成功報酬のみを設ける仲介業者・FAも相当数あるとされる)。なお、別途、実費(交通費等)を請求することもある。

・着手金
着手金とは、主に依頼者との仲介契約・FA契約締結時に発生する手数料である。後述の成功報酬が発生した場合には、当該成功報酬に含まれる(成功報酬の内金となる)ものとすることもある。請求する仲介業者・FAと、請求しない仲介業者・FAに分かれる。

・月額報酬
月額報酬(定額顧問料、リテーナーフィーと呼ばれることもある)とは、主に月ごとに定期的に定額で発生する手数料である。後述の成功報酬が発生した場合には、当該成功報酬に含まれる(成功報酬の内金となる)ものとすることもある。請求する仲介業者・FAと、請求しない仲介業者・FAに分かれる。

・中間金
中間金とは、基本合意締結時等、案件完了前の一定の時点に発生する手数料である。後述の成功報酬が発生した場合にはこれに含まれる(成功報酬の内金となる)ものとすることが多い。請求する仲介業者・FAと、請求しない仲介業者・FAに分かれる。

・成功報酬
成功報酬とは、主にクロージング時等の案件完了時に発生する手数料である。仲介業者・FA の場合は、主に以下の3つの基準となる価額のいずれかに、一定の方式に則った計算を施すものが多い。ただし、これらを組み合わせたり、修正したりする方式もあれば、これらと全く異なる方式(例えば定額)を採用する仲介業者・FAも存在する。なお、金額水準は、各仲介業者・FAによって異なるため、複数の仲介業者・FAを比較検討することが望ましい。

>株式価値基準
株式価格の金額そのものを基準とするものである。基準として理解しやすいと言える。譲り渡し側の場合には、株式価値が高くなれば手数料の金額が高くなることにも合理性が認められるが、譲り受け側の場合には、株式価値が高くなるほど手数料の金額も高くなり負担感が増すため、異なる算定方法(例えば、譲り受け側のみ定額とする等)が合理的であることが多い。

>移動総資産基準
主に譲渡額に負債額を加えた金額を基準とするものである。これは、譲り渡し側の(移動)総資産額は、その事業規模に連動して大きくなる傾向にあるとの考えによるものである。したがって、同じ譲渡額であっても、負債(特に借入金)の金額が高い方が、手数料は高くなるということになる。

>純資産基準
簿価純資産額の場合には、決算書上の記載を基に容易に計算でき、明確であるという特徴があるため、特に譲り渡し側が小規模企業の場合には、簿価純資産額を基準とすることがある。なお、譲り渡し側が債務超過企業の場合には、純資産額がゼロ円以下となるため、通常、別の要素を考慮する株式価値基準や移動総資産基準を採用することが多い。

レーマン方式
以上の基準を基に報酬を算定する手法として、レーマン方式が採られることが多い。レーマン方式は、「基準となる価額」に応じて変動する各階層の「乗じる割合」を、各階層の「基準となる価額」に該当する各部分にそれぞれ乗じた金額を合算して、報酬を算定する手法であり、特にM&A 専門業者において広く用いられている。

例えば、下記のような表を用いて報酬を算定するが、例示された各階層における価額・割合は必ずしも下記の価額・割合に限定されるものではなく、各仲介業者・FA により異なる。また、原則としてレーマン方式によるとしても、譲り渡し側が小規模である場合には、「基準となる価額」が小さく、十分な成功報酬を確保できないケースもあり得るため、これに備えて最低手数料を設けている仲介業者・FAは多い。

最低手数料の金額は、各仲介業者・FAにより異なるため、仲介業者・FAに依頼しようとする中小企業は、最低手数料を含め、手数料の算出方法を明確に確認しておく必要がある。

報酬額の注意点として、同じ料率のレーマン方式であっても「株式価値基準」と「移動総資産基準」では出来上がりの報酬額が全く異なる点に注意が必要となる。特に、借入金等の負債が大きく株式価値が小さな企業の場合、移動総資産額で算出した報酬の場合、株主の報酬控除後の手元に残る資金は大幅に少なくなってしまう(極論するとほとんど報酬で持っていかれてしまうケースもある)。

また、報酬体系として、一般的にはレーマン方式が採られるが、案件によっては、レーマン方式ではなく、最低報酬金額及び目標とする株式譲渡金額を設定の上、目標株式譲渡金額以上の売却に成功した場合に、最低報酬金額の他に、インセンティブとしてさらに乗じる割合分が加算されるケースもある。

以下に、一例として、株式価値基準及び移動総資産基準によるレーマン方式の成功報酬の算定例、最低報酬額及びインセンティブが発生するケースの算定例を記載する。一例の記載にあたり、着手金、月額報酬、中間金の設定はなしとし、売却金額の設定も各種同様の設定とした。

②M&Aプラットフォームの手数料
現在、譲り渡し側について、M&Aプラットフォームを利用したマッチングに関し、一切の手数料が発生しないケースが多い。しかしながら、今後、M&Aプラットフォーム市場がより発展することにより、譲り渡し側の件数が増えてくれば、譲り渡し側においても手数料が発生するケースも増えてくる可能性がある。

一方、譲り受け側については、マッチング後のクロージング時点で成功報酬が発生する形(完全成功報酬型)が多い。この場合、着手金・月額報酬・中間金等は発生しないケースが多く、譲り受け側における手数料も、譲渡額等の数%程度とされることが多い(最低手数料を設けるところもあれば、設けないところもある)。なお、譲り渡し側・譲り受け側とも、M&Aプラットフォームの利用とは別に、特にマッチング後の手続において、仲介業者・FAや士業等専門家への依頼も行う場合には、これらについての手数料・報酬が別途必要となる。

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次回は、仲介契約・FA契約やプラットフォーム利用時の主なポイントについて、徹底解説していきます!

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