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M&Aハウツー

M&A(合併買収)は株価に影響するのか?上昇・下落事例とメリットデメリットを解説

M&Aの実行は、企業として重要な経営判断です。そのため、M&Aの実行は企業の評価と株価に大きく影響します。今回の記事では、M&Aが株価に与える影響について、事例も挙げながらわかりやすく解説します。


M&A(合併買収)は株価に影響するのか

まずは、M&Aが株価にどう影響を与えるのかを見ていきます。日本国内では1990年代後半から2000年代にかけて、国内企業間の合併や外資による買収などのM&Aが盛んになりました。

事例として、2018年5月に武田薬品工業がシャイアー社(アイルランドのバイオ薬品製造会社)を日本企業の買収案件として、過去最大額の約6兆8,000億円で買収することが発表されて話題を呼びました。

このようなM&Aにより、買収側企業の株価はどのような影響を受けるのでしょうか。一般的には買収価格や企業規模などから、株価に多少なりとも影響を与えます。

M&Aの公表や実行が、具体的に当事者企業の株価にどのような影響をおよぼすのかについて、以下で詳しく触れていきます。


M&A(合併買収)は企業にどんな影響を与えるのか

M&Aを発表すると、業績の向上が期待される場合株価は上がる傾向がありますが、近年まれに株価が下落することもあります。主な理由は以下のとおりです。

  • 買収効果に疑問がある
  • 買収価格が不適切である
  • 買収資金調達で負債が増加する

武田薬品によるシャイアー買収も、当初は株価が下がりました。理由は、株式の希薄化懸念が株主に生じたことが挙げられます。また、買収資金調達目的の社債や借入による負債の増加などが不安視されたため、株価が下がりました。


買収側企業の株価に影響が出た事例

買収側企業の株価の上昇および下落事例を、それぞれ2例ずつご紹介します。


株価が上昇した事例2つ

通信業界大手のソフトバンクグループと、さまざまな形態の飲食店を運営するコロワイドを取り上げます。


【ソフトバンクグループ】

ソフトバンクグループは、これまで多くの企業を積極的にグループ傘下に収めて大きくなってきました。2012年のイー・アクセスの買収がきっかけとなっています。それにより、1.7GHz帯と2.1GHz帯のFDD-LTEサービスの提供が可能になりました。

2018年には、中国のネット通販最大手であるアリババの関連会社化、ARMを傘下に収めました。2019年にはLINEと経営統合を果たし、国内ネット通販の寵児となっていた株式会社ZOZO(ZOZO TOWNの運営会社)を買収します。

イー・アクセスを子会社してからのソフトバンクグループの株価は、上昇路線を継続し、2020年3月15日には9,969円をつけました。その後コロナ禍で一時的に下落したものの、直近の​​2021年11月15日には7,000円をつけています。

出典:https://www.softbank.jp/corp/aboutus/profile/history/

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXNASDC0100E_R01C12A0EA2000/


【コロワイド】

コロワイドは、今でも展開されている「手作り居酒屋 甘太郎」で始まり、2000年代に経営不振の飲食店を次々と傘下に入れて大きくなってきました。居酒屋や焼肉店、回転寿司店などのさまざまな業態を抱えています。

2012年10月には「牛角」のレックスホールディングス、2014年10月には「かっぱ寿司」のカッパ・クリエイトを傘下にいれました。

これらのグループ会社のリソースやノウハウを有効に活用しながら、グループを成長させます。M&Aを開始した頃の456円だった株価も、9年後には2,306円まで上昇しています。

コロナの影響が直撃して、2020年の7月27日には1,179円まで落ち込みますが、1ヶ月半後の9月14日には力強く2,080円まで回復しました。直近では、2021年7月5日に2,026円をつけています。

出典:https://maonline.jp/news/20120907a

出典:https://www.nikkei.com/article/DGXLASGD27H09_X21C14A0EAF000/


株価が下落した事例2つ

ここでは弱電大手のパナソニックと、ネット関連事業のグリーを取り上げます。


【パナソニック】

パナソニックが三洋電機を傘下に収めた後に、株価が下落しました。三洋電機との資本業務提携契約を締結したのが2008年12月で、翌年の12月に連結子会社化しました。

その後は、2011年4月1日が効力発生日となる株式交換を実行し、三洋電機はパナソニックの完全子会社となりました。

三洋電機を買収した際にパナソニックにはのれんが計上されましたが、最終的にのれんは減損されることになります。

なぜなら、当初想定していた双方の技術を用いた新商品開発が、そもそも両者の持つ技術には根本的な違いがあったために実を結ばなかったからです。

買収から4年後には、買収当時1,113円だった株価はその半分にも満たない522円まで落ち込みました。そこからの9年間は上昇と下落を繰り返しつつ、直近の11月15日には1,418円をつけています。

出典:https://news.panasonic.com/jp/press/data/jn081219-2/jn081219-2.html


【グリー】

SNSを運営していたグリーは2011年1月と4月に、事業拡大を目的にインターネット事業会社を買収しました。買収によりビジネススケール拡大が期待されて、株価は一時上がりました。

M&Aを実行する直前には1,033円だった株価が、その年末には2倍を超える2,652円をつけたのです。

しかし、コンプガチャが景品表示法に抵触する可能性があるとして2012年5月に問題視され始め、ユーザーへの課金方法やサービスの提供方法の変更を余儀なくされます。その結果株価は下がりました。

M&Aの5年後には576円まで下がります。その後2017年6月には981円をつけましたが、その後はまた苦戦が続きます。しかし、2021年9月から上昇路線に入り、直近の11月15日にはM&A実行前に近い1,018円をつけています。

出典:https://cn.reuters.com/article/idJPnTK051548420110126

出典:https://www.itmedia.co.jp/news/articles/1104/13/news082.html


売却側企業の株価に影響が出た事例

売却側企業の株価が上昇および下落を、それぞれ2例ずつご紹介します。


株価が上昇した事例2つ

ここでは三菱電機とNECを取り上げます。


【三菱電機】

三菱電機は競争が激化していた半導体部門を2003年4月に分社化して、日立製作所の半導体部門を設立し、その会社ルネサステクノロジの株式を45%保有しました。

その後、NECと共同出資で設立されたNECエレクトロニクスと経営統合し、ルネサスエレクトロニクスとなり株式の保有割合は25%となります。その後は、産業革新機構による資本も注入され、三菱電機の株式保有率は2017年12月末では4%まで減少します。

三菱電機は、2008年のリーマンショックや2011年の東日本大震災の影響で株価が下落する局面もありました。それでも、半導体部門を分社化する2003年4月から2017年12月の間に株価はほぼ6倍になりました。

2021年に入ると、6月7日の1,741円を境に下落し7月5日に1,447円まで下がるも、直近の10月18日には1,583円まで回復しています。

出典:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/2002/1003a/index.html


【NEC】

NECは2016年7月1日に、パソコン事業をレノボグループと合弁で分社化した子会社を、レノボNECホールディングスに売却しました。これにより、1980年代後半から2000年代まで国内トップシェアを誇ったパソコン事業から完全撤退します。

これはNEC本体が、社会インフラ事業強化のため資金が必要である状況があっての判断でした。この売却によって、社会インフラ事業の将来性に期待がかかることになり、株価は上昇しました。

2016年7月1日の時点で2,410円だった株価は、2016年12月30日に3,100円まで上昇しました。その後は一旦下落するも、緩やかな上昇路線が5年ほど続き、2021年9月17日には6,390円をつけます。

そこからまた下落して苦戦をしていますが、直近の11月16日で5,590円をつけています。

出典:https://jpn.nec.com/press/201607/20160701_01.html


株価が下落した事例2つ

ここでは日立製作所と東芝を取り上げます。


【日立製作所】

日立製作所は、コア事業である情報やインフラ関連ではない日立物流を2016年3月に、日立キャピタルを同年5月に売却しました。両者とも黒字経営を続けていたので、手放すことを疑問視する関係者も少なくありませんでした。

その影響で、2016年3月31日時点で2,633円まで上昇していた日立製作所の株価は、3ヶ月後の6月30日に2,119円まで下落します。

その後の5年間は緩やかに上昇と下落を繰り返し、2020年の7月以降は継続的に上昇しており、直近の11月8日には、7,229円をつけています。

出典:https://www.hitachi.co.jp/New/cnews/month/2016/05/f_0513a.pdf


【東芝】

東芝は、メモリ事業の会社分割による分社化の方針を2017年1月27日に決定し、その中で外部資本導入の検討も発表されました。

通常の分社化や事業譲渡は、不採算部門の売却や事業の選択と集中を目的として行われます。ところがこの分社化案件は、グループ会社ののれんの減損損失を補填するために行われたものなので、株価はみるみる下落しました。

2017年1月4日時点で2,774円だった株価は発表後にどんどん下り、2月28には2,082円まで下がります。その後、徐々に回復して年末には3,000円台に戻し、2年以上3,000円台の半ばから後半をキープしていました。

コロナの影響で2020年3月には2,380円まで落ち込みましたが、直近の11月1日には5,122円をつけています。

出典:https://www.toshiba.co.jp/about/ir/jp/news/20170127_1.pdf


M&A(合併買収)のメリット・デメリット

M&Aのメリットとデメリットを簡潔にご紹介します。

まず、主なメリットは以下の5点です。

  • 進出したい事業領域への進出
  • 業績向上のスピードアップ
  • ビジネススケールの拡大
  • スケールメリットによるコスト削減
  • 経営リソースやノウハウの充実

M&Aによって得られる新たなリソース・ノウハウ・ナレッジがもたらすシナジー効果がメリットといえます。


次に、主なデメリットは以下の4点です。

  • 買収交渉に時間がかかる
  • 株価が下がるリスクがある
  • シナジー効果が発揮できないリスクがあ
  • 資金調達が必要になる(株式交換の手法もある)

買収を検討するときは、ともすればメリットばかり期待しますが、実際にはデメリットもあるので、専門のM&Aアドバイザーに相談しながら進めるのが賢明です。


M&Aにおける株価算出方法

M&Aを行う際の基本的な株価算出方法をご紹介します。

  • 取引事例比準方式
  • 類似会社との比準方式
  • 純資産価額方式
  • 収益還元方式
  • 配当還元方式

それぞれを見ていきましょう。


取引事例比準方式

買収対象企業の実際の株式の取引価額をもとに算定する方式です。上場企業の場合と非上場企業の場合にわかれます。

【市場価額法】

上場している企業の場合に、現状の株価を算出根拠とする方式です。

【取引事例価額法】

非上場企業の場合で過去に売買の事例があれば、その際の価額を基準にする方式です。


類似会社との比準方式

買収対象企業と類似した上場企業の株価をもとに、経営成績や財務内容を比較して株価を算定する方式で、主に3つあります。

​​【類似会社比準法】

企業タイプとして類似しているものがある場合に、その企業と比較する方式です。

【類似業種比準方式】

類似企業がない場合には、類似した業種の同様の規模の企業と比較する方式です。

【PER比準方式】

上記のような方式での比較において、株価収益率を比較の指標とする方式です。


純資産価額方式

純資産価額をもとに買収対象企業の株価を算定する方式で、3つに分かれます。

【簿価純資産法】

対象企業の会計上の資産と負債をベースに算出します。帳簿上の資産から、負債を差しいて出る純資産額を株式価値とみなします。

【時価純資産法】

簿価が実勢と乖離している場合に用いる、買収対象企業の資産と負債を時価に置き換えて算出する方式です。

【時価純資産プラス営業権法】

より正確に企業価値を求めるために、時価純資産に加えて収益性を考慮する方式です。超過収益力である「のれん代」や人材力、ブランド価値や技術力などの無形資産を数値化して加算します。


収益還元方式

平均収益を資本還元率で割って企業価値を評価し、将来に期待できる収益の総和で企業価値を測る手法です。平均収益が不安定なスタートアップなどでは計算が難しくなるので、収益性が安定している企業向けです。


配当還元方式

配当額の予想値を利回りで割って元本の株式価値を求め、企業価値を算出します。企業の配当政策によって配当額は変動するため、確定的な値を出すのは困難です。そのため、大企業向けではなく、非上場企業や株主が少数の上場企業向けです。


M&Aと株価まとめ

M&Aが行われると、企業の個々の状況や業界の背景、そのほかさまざまな要因によって株価が上昇したり下落したりすることがあります。一時的に下がってから上昇する場合や、逆に上昇しても買収後の企業の動きによって下落していく場合もあります。

確固たる法則は見出されていませんが、過去の例をつぶさに見ることである程度予測できる場合があります。M&Aを検討しているみなさんはここで紹介した情報を参考に、実行後のシミュレーションを行いながら、株価下落のリスクを回避できるように進めてください。

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